今日の洗濯の扉は、東京都府中市の一伸ドライクリーニング店 工藤がお送りします。
クリーニング屋さんって、世の中に沢山いますけどね、今クリーニング屋さんをやっているのは大概二代目さん。
三代目以上のお店は、本当に老舗で、昔は中心的な役割を担っていたクリーニング屋さんでしょうね。
最初から話しがそれますけど、僕らの親の世代は、クリーニング屋さんに丁稚奉公として働いていたんです。
そこから独立をしてお店を持った、そういう方が増えてきて一気にクリーニング屋さんが世の中に増えて行きました。
ですから、僕のような二代目はその独立をした方々の息子、三代目以上の人がいる所は、丁稚奉公を受け入れていた根本のクリーニング屋さんが多いんです。
僕がクリーニング屋さんになったのは、21歳の頃でした。
高校を卒業して、そのままフリーターになって。
当時フリーターと言う言葉なんてありませんでしたから、ちょうどフリーターと言われる走りですね。
三年ほどがむしゃらに稼ぎまして、中型のバイクを買って、九州へ旅立ったんです。
一月ほどぐるぐる回った所で、帰ってきてから実家のお店に入りました。
子供の頃から、漠然とクリーニング屋さんになりたいな、と言う思いはあったんです。
なんででしょうね、どうしてか?と言われると明確な理由はないんですが、なんとなく格好よかったんだと思います。
朝から晩まで働いている両親の姿を見て、それが格好いい、と思えたと言うのは自分にとって幸せだったと思います。
同じ背中を見ていても、妹はクリーニング屋にだけはなりたくない、といってましたから。(笑)
あんな大変な思いはしたくない、といつもいってましたっけ・・・・、でも、社会人になって僕よりも不満をいつも言ってますけどね。(笑)
僕の方が幸せだな。(笑)
そうそう、両親が僕に言い聞かせていた言葉がありました。
クリーニングは楽しいぞ。
これは常々言われてましたね。
だから多分、悪いイメージがなかったんだと思います。
お店に入ってから、仕事を与えられますが、いくらクリーニング屋の息子と言えど、勉強しなければ何にも分からないんですよ。
服の区別もつかなければ、繊維の区別もつかない。
洗い方も知らないし、どうすればいいのかまったく分からない。
そんな状況が半年続いていました。
翌年、東京クリーニング学校と言う所がありまして、一年通って、国家資格 クリーニング師の資格を取得。
晴れて堂々とクリーニング屋さんだ!と言えるようになったんです。
しかし、資格を取ったからといって、威張れるほどクリーニングの仕事は簡単ではありません。
毎日が勉強、毎日が研究、でしたね。
両親も教えられてクリーニング屋さんなったわけではないですから、当然僕にも教えてはくれません。
仕事は盗め。
一体いつの時代の話???と言いたかったですけど、これが後々大きな意味を持ってくるのでした。
教えてくれないのなら、自分で勉強するしかありません。
色々な本を買って読んだり、勉強会に参加しましたね。
クリーニング屋さんの友達も増えて、先輩も増えて。
そこでも、色々な事を教えてもらいました。
現場の仕事の話はもちろん、自分のお店とは違った営業形態のお店の話、本当にためになります。
いわゆる大手と呼ばれるチェーン店のクリーニング屋さんも、僕らとは違った苦労をしているんです。
段々と視野が広くなっていくんですよね。
気が付いたらもう17年たっていました。
立派なクリーニング屋さんです。(笑)
クリーニング屋さんをやっていて、たのしいな、うれしいな、と思うこと、沢山あります。
しみが落ちたとき、本当にうれしいですね。
これおちないんじゃないの?生地にダメージでないかな?そんな心配をしながら、それでもキレイに出来たときの感動たるや、しみ抜き台の前でガッツポーズをしてしまうくらいうれしい。
自分が仕上げた品物を、並べているとき、きれいだなあと、思ったり。(笑)
服ってね、アイロンをかけて並べておくと、それはもうキレイなんですよ。
感動すらします。
ここまで仕上げたんだと言う達成感、それもあるんだと思いますが、しわ一つない状態で並んでいる姿はやはりきれいなんですね。
そして、お客様が喜んでくれたとき。
これが一番うれしい。
色々な職業がありますけどね、お客様に、こんなに『ありがとう』といってもらえる職業は他にないんじゃないかな?と思うんです。
それ程、キレイにしたとき、ありがとうといってもらえます。
お客様にとって、大事な1着なんです。
その服が大事だったり、どうしても必要な服だったり。
困っているお客様の手助けが出来る仕事、こういう仕事って本当にやりがいがあるんですよ。
でもね、こういう仕事ほど、教えられたものはほとんど使い物にならないんです。
今まで、いくつも失敗をしてきたり、お客様に怒られたりもしてきました。
それを一つ一つ反省して、改善して、直していく、その繰り返しがお客様に喜んでもらえるようになっていくんだと思います。
僕がこの仕事に付いたとき、両親に手取り足取り教えてもらっていたら、どうなっていたのかな?と思います。
決められた事を、決められた手順でこなすだけの仕事しかしていないのかなあと。
それだと、たぶん、クリーニングが面白いとは僕も言わなかっただろうな。
クリーニングは、創造力のある仕事だと思います。
それ程、魅力的。
続けていく理由はここですね。
たぶん、いまクリーニング屋さんをやっている人は、クリーニングってたのしいな、いいな、と思っているはず。
だから、続けられるんですよ。
もっと、その気持ちが沢山のお客様に届けばいいなと思います。
クリーニングっていいですよ。