洗濯の扉ブログ記事

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ツキを育てるクリーニング店
 
 

突然ですが、『なんだか気になる人』って、いませんか?

 

例えば、朝の通勤時間に必ずすれちがう人。

お気に入りの店で、いつも同じ場所に座って本を読んでいる人。

 

声をかけるところまではいかないけれど、

見かけるとほっとしたり、しばらく見かけないと妙に気になったり。

 


私にはそんな『なんだか気になる人』が数人います。

その中でもクリーニング店に出入りされる謎の紳士が・・特に。

 


見かけるのは月に一度くらい。夜は遅めの時間帯。

 


年の頃は60代半ば。

運転手さん付の車で近くまで来られ、歩いてお店に向かわれます。

 

 


で、気になるのがいつも・・手ぶら(笑)

 

 


お店に行かれた、と思ったらすぐに出てこられて、

再び歩き出されると待機していた車がすっと現れ、瞬く間に車上の人に。

 

 


ちょっと怪しい空気感、なんとも気になるのです。

 

 

 

先日、その紳士に接近できるチャンスがありました。

中秋の名月。きれいな満月でしたね。ご覧になりましたか?

 

 


その方が、月をじっと見上げておられるところに遭遇したのです。




「きれいですね。」と、声をかけてみました。


「きれいですね。6年ぶりの満月らしいですね。」と、
気さくな返事。

「あの・・、これからクリーニング屋さんへ・・ですか?」



思い切って訊ねてみると、案の定、驚いた顔(汗)
あわてて、突然ですいません、実は・・と気になっていたことを告白。

 

 

「ははは、そんな風に思ってくださる方がいたとは驚きですが、これも
ご縁ですね。実は、ちゃんと依頼の品を持ってお店に伺っています。」

 

 

そう言って、ご自身の胸をトントン、とたたかれました。

 

 



何だったと思います?

 

 



答えは・・ハンカチ。

スーツの胸ポケットに挿す、ポケットチーフでした。

 

 


お店の先代のご主人との出会いとなった品物だそうで、

「あの時声をかけてくださっていなかったら、今の私は、いないです。」
そう話してくださいました。

 


・・・・・・・・・

 


この方は、部品を扱う企業の社長でした。

恵まれた環境とは言い難い中で起業をされ、当時の事務所は
ご自身で木材を集めて建てた小さな小屋、だったそうです。

 

寝食を忘れて仕事に打ち込まれた結果が少しずつ実りはじめた時、

大きな仕事の話が舞い込んできました。

 

スーツを買うお金もなく、唯一の作業着で勇んで向かう途中、

自転車が壊れて困っている人が。

どうにも見過ごせずに修理をされたそうなのですが、

その時に持っていたハンカチが自転車の油で汚れてしまい、

近くで掃除をしていた男性に「捨ててもらえないか」と

頼んだのだそうです。

 


行った先での商談は、残念なことに実りませんでした。

ろくに話を聞いてもらえず、腑に落ちない気持ちを抱えながらの帰路。



途中、男性に声をかけられたそうです。

 



「お預かりした品物、きれいになりましたよ。」

 



それは捨ててほしいと頼んだハンカチ。

 



汚れが落ちてきれいになったハンカチは・・

うすく糊付けがされ、くたびれた生地はハリを戻し、

角と折り目がずれることなく重なり合った“完璧な四角形”

・・だったそうです。

 


クリーニングというプロフェッショナルな職業に出会われた瞬間でした。

 


その男性がクリーニング屋さんだと知ったと同時に、

知らなかったとはいえ、失礼なことをしてしまったと後悔し、
お詫びと、改めてお礼に伺いますと話をされたところ、

 


「私のほうこそ、出すぎたことをしてしまいました。
でも、もしよろしければ、その作業着を洗わせていただけませんか。」

 


そうご主人に言われて、翌日に依頼。

後日、仕上がった作業着を見て「本当に自分のものか」と何度も
確認をしたくらい、その
美しい仕事に震えがとまらなかったそうです。

 



そして、ご主人からこのように言われたそうです。

 



「仕事では、汗もほこりも努力も、先様に見せてはいけませんよ。」

 

 

・・・・・・・・・・

 


その時、大きな仕事が実らなかった理由に気がつかれたのだそうです。

 

技術ばかりに夢中になり、社会人としての礼儀作法が欠けていたこと。

「事業」は「人業」だということ。



技術さえよければ他は赦される、そんな気持ちがいつしか芽生え、
人としての信用を得ることができなかったのではないか。

 


その日をきっかけに、社内を徹底的に見直して整備をし、

着の身着のままだった自分自身への作法と躾を学ぶため、

クリーニング店のご主人のもとへ通ったのだそうです。

 


成功された今も当時の気持ちを忘れず、
折に触れ先代のご主人を偲びながら、足を運ばれるのだそう。

 


・・・・・・・・・・

 


満月の下でお別れをした後、

お店へ向かわれる途中で一度振り返ってくださいました。

会釈しながら、胸ポケットをトントン、とたたかれたのですが、

今度は『心』をノックされたような気がしました。

 

 

ツキ(運)が生かされるのも、
人の出会いと心を大切に育んでこそ、かもしれません。



以上、本日の扉は カジコ でした。


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